無知の涙 永山則夫

手記の内容、体裁は支離滅裂。思考をそのまま言語化すると、こんな感じにきっとなる。詩を書き出したかと思えば、思いのたけをツラツラと書き殴るような文章。かと思えば読者を意識したような整った文体の評論文。


マルクスキルケゴールソクラテスアリストテレスなどの古典に言及する点が目立つ。監獄で読める本はそのような古典書籍に偏っていたのだろうか。はたまた、自己顕示欲の現れなのか。


死刑囚が獄中で考えたことを書いた本として意識して読むと、興味深く読めた。死刑囚の気持ちを想像してみる。死刑が確定して、いずれ執行される事が決まった人生。


だが、獄中外にいる自分だって、死ぬ事が既に確定している。明日か、もしくは今日にだって事故でポックリと逝く可能性はある。その意味では死刑囚とも変わらないのでは無いか。